リプレースの相談、外注先との初回打ち合わせ、ベテランから若手への引き継ぎ——。
文脈はさまざまでも、必ず同じ瞬間が訪れます。
「現状の仕様書をいただけますか?」
この一言で、すべてが止まってしまいます。
「仕様書がない」で止まる現場
仕様書は、ない。正確に言えば、開発時に作られた設計書ならあるかもしれません。しかしそれは、幾度もの改修を経た今のシステムとは、もはや別物です。
「では、まず仕様書を整備してから」という結論に落ち着き、そしてその「まず」は、たいてい実現しません。仕様書を書ける人は、今まさに日々の保守に追われているごく限られた人だけです。その人たちに「仕様書も書いてくれ」と言えるでしょうか。
これは怠慢ではありません。構造の問題です。仕様書がなければ始まらないのに、仕様書を書ける人がいない——この行き詰まりを、どう解くか。
人が書かなくても、仕様書はできる
「仕様書は人が書くもの」——この前提を変えられるとしたら、どうでしょうか。
Claude Codeに代表されるAIエージェントは、RPG言語/COBOLのソースコードを直接読み込み、処理内容を自然言語で整理して、仕様書として出力します。イメージとしては、ベテランのエンジニアが隣に座って、プログラムを一行ずつ読み解いてくれる感覚に近いかもしれません。
ChatGPTをお使いの方も多いと思います。ただ、ChatGPTとは根本的に違うことが一つあります。
ChatGPTは、ブラウザ上で動きます。プログラムの中身を知りたければ、ソースコードをコピーして貼り付けるか、ファイルをアップロードする必要があります。1本ずつ、手作業で。関連するプログラムがあれば、人間がそれを探してきて、自分で渡さなければなりません。
AIエージェントでは、この手間がなくなります。
1つのプログラムを指定するだけで、CALL先のサブルーチン、COPY句で取り込まれる共通定義、外部参照されるファイル定義——これらをAIが自律的にたどり、まとめて解析します。人間が関連ファイルの所在を把握していなくても問題ありません。AIが自分で探しに行くからです。
コードをアップロードして解析するタイプのサービスもありますが、それらは関連ファイルを人間が指定する必要があります。数百、数千のプログラムが絡み合うレガシーシステムにおいて、「AIが自分で探す」か「人間がすべて指定する」かの違いは、決定的です。
具体的に、何が出力されるのか
AIが生成するドキュメントの例をいくつか挙げます。
- 処理フロー:プログラムの処理の流れを、自然言語で段階的に記述
- 画面レイアウト定義:DSPF(画面定義体)をもとに、画面構成と各項目の役割を整理
- 帳票定義:PRTF(帳票定義体)をもとに、出力帳票のレイアウトと項目を整理
- データ構造一覧:PF/LF(物理ファイル・論理ファイル)のフィールド定義を一覧化
- 影響範囲マップ:プログラム間の呼び出し関係やファイルの参照関係を可視化
AIの出力がすべて正確とは限りませんが、ゼロから仕様書を書くことと、AIが作った仕様書をレビューすること。この差は、決定的です。
社内のコードは、安全に扱える
「AIにソースコードを読ませる」と聞いて、不安を感じるのは自然なことです。社内のプログラムの扱いには、セキュリティ上の配慮が欠かせません。
この課題は、Docker(ドッカー)と呼ばれる仮想環境でAIエージェントを動かすことで解決することができます。具体的には、以下の安全性を確保することができます。
1. プログラムの内容は保存されない
AIはプログラムを読んで仕様書を作りますが、読み取った内容がどこかに保存されたり、AIの学習に使われたりすることはありません。
2. AIが触れる範囲を限定できる
AIが動くのは、パソコンの中に作られた「仮想の作業部屋」の中だけです。本番のシステムには一切触れません。さらに、AIに見せるフォルダも事前に指定できるので、見せたくないファイルを勝手に読むこともありません。万が一何か問題が起きても、作業部屋を閉じれば元通りです。
3. 始めるのも、やめるのも簡単
特別なソフトウェアを購入する必要はありません。設定ファイルを共有すれば、チームの誰のパソコンでも同じ環境がすぐに再現できます。合わなければ仮想の作業部屋を消すだけで、パソコンの環境は元のまま残ります。
AIエージェントと始める、最初の一歩
仕様書が手元に揃ったとき、現場で何が変わるでしょうか。
引き継ぎの場面を想像してみてください。ベテランの頭の中にしかなかった業務ロジックが、ドキュメントとして残っている。若手が「この処理は何をしているのか」と疑問を持ったとき、まず自分で確認できる資料がある。ベテランが退職した後も、システムの知識は組織に残ります。
外注先との打ち合わせはどうでしょうか。「現状の仕様書をいただけますか?」と聞かれたとき、「はい、こちらです」と渡せる。会話の出発点が、ゼロからの説明ではなく、仕様の確認になります。
リプレースの検討も同じです。「どのプログラムが何をしているのか」「プログラム同士がどう関連しているのか」が可視化されていれば、移行の範囲と影響を、具体的に議論できます。経営層への説明にも、根拠が伴います。
仕様書が揃えばすべて解決する、とは言いません。引き継ぎには教育の時間が要りますし、リプレースには大きな判断と投資が伴います。
ただ、仕様書がなければ、そのどれも始められません。
ドキュメント化は、モダナイゼーションの「すべて」ではなく、「最初の一歩」です。そしてその一歩を、人の手だけに頼らずに踏み出せる手段が、今はあります。
当社の生成AIエージェント導入支援サービス
技術的な知識がなくても活用できるよう、導入から定着まで生成AIの専門家として伴走します。「こういう使い方はできないか」「期待した結果が出ない」といった疑問に対して、定期的な相談会で解決策を提案します。他社での成功事例や失敗事例も共有されるため、自社で試行錯誤する時間を大幅に短縮できます。
当社では、メインフレームやオフコンの知見と最新の生成AI技術の両方を活かし、RPG/COBOLをはじめとするレガシーシステムのドキュメント自動作成をご支援しています。「まず小さく試してみたい」という段階から、組織的な導入まで、伴走型でサポートいたします。
サービス詳細・資料請求はこちらレガシーシステムの価値を次世代へ
レガシーシステムは企業にとってかけがえのない「資産」です。AIエージェントにより、属人化、技術継承の断絶、リプレース判断の困難という壁を乗り越える道筋が見えてきました。
重要なのはAIエージェントという選択肢を持ち、使うということです。AIによりシステムの全体像が見えることで、客観的データに基づいた判断ができます。工数削減、保守コストの適正化、リプレース判断の最適化といった効果も期待できます。
レガシーシステムが持つ本来の資産価値を取り戻し、次世代へと継承していく。AIエージェントは、その実現を支援する新しいアプローチです。